03/19 湯女の櫛 備前風呂屋怪談

江戸時代初期、備前岡山城下の風呂屋・和気湯に、お藤という天女のような湯女がいた。今日の太夫にもなれるのではと言われるほどの美貌と諸芸を持っており、なぜ田舎の風呂屋にいるのかと誰もが疑問に思っていた。元藩主のご落胤とも朝鮮王族の血をひくとも囁かれたが、お藤はけっして身の上を語ろうとはしなかった。お藤の寝物語は評判を呼び、夜ごと男達が彼女の元を訪れる。そんなお藤の語る夜伽とともに綴られる短編集です。
「お藤の櫛」「夢幻の人」「死の彷徨」「彫物師」「焼かれた骸」「眠れない男」「籠の鳥」「朝鮮からの使者」の8編から成るんだけど、どれも物の怪や霊的な怖さかと思いきや、それとは少し異なる次元でゾッとする不思議なオチがついています。
久々の岩井志麻子。ぼっけぇ、きょうてぇの時も思ったんだけど、岡山の方言を用いた文章なのにスッと読めるのが不思議。怖い物見たさで覗いてしまう感覚というか、なんとも湿度の濃い物語たちでした。このくらいの時代のお話、好きだなあ。